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4話
西原の車の助手席に収まったむつだったが、なぜか日本刀だけは後部座席に置いていた。汚い物を触るようだったり、側に置いてなかったりと、むつの行動に冬四郎は不思議でたまらなかった。西原もそうなのか、助手席のむつを気にするように、ちらちらと見ていた。だが、むつは2人の視線に気付いていないのか、窓枠に肘を置いて、頬杖をついてぼんやりとしている。
会話がないまま、西原の運転する車は帰宅ラッシュの渋滞にすっぽりとはまっていた。渋滞で動かないうえに、一言二言の会話もなく気まずい。
動かない景色を見ているのも飽きたのか、むつは身体の位置を変えるようにして西原の方を向いた。だが、その目はどこを見ているのかいまいち分からない。
「…なぁ、むつ」
「んー?」
「もう寒気とかないか?」
「うん、大丈夫だよ。車ん中は暖かい…けど、車酔いしてきたかもしんない」
「それで静かだったのか!?早く言えよ」
「…窓開けるね」
むつは、窓をあげて少しだけ顔を出すとぷはっと息をついた。まるで、今まで酸素不足だったかのような仕草に、西原は呆れたような顔をしていた。




