4話
冬四郎のマンションのある最寄り駅に着いたむつは、寒いにも関わらず改札の前で冬四郎がやってくるのを待っていた。電車が着くたびに、改札から出てくる人の中に、冬四郎の姿をきょろきょろと探していた。だが、冬四郎はむつの予想に反して改札とは反対からやってきて、ぽんっとむつの肩に手を置いた。
「っつ!!」
声もかけられる事なく、肩を叩かれたむつは驚いて声もなく飛び上がった。恐る恐るといった感じで振り向くと、きょとんっとした冬四郎と共に西原が立っていた。
「びっ…びっくりしたんだけど」
「悪い悪い」
全然悪びれた様子もなく、冬四郎はむつの反応に笑いを堪えているようだった。そんな冬四郎は、ちらっと西原を見た。
「…一緒に居るって事は何かあったの?」
「西原君か?用事があって来てたんだけどな、ついでに送ってくれるっていうからお言葉に甘えたんだ」
「荷物持って電車は大変だと思うし…この時間は混むからな。むつもついでだから、家まで送ってやるよ」
むつは首を傾げながら、西原の顔をのぞきこむようにして、まじまじとその顔を見た。いつもと同じようではあっても、どこかぶっきらぼうな言い方に、むつはふーんと言った。




