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4話
山上とは必要がない限りは喋らないと決めていたのか、仕事でも必要な事がなく1日を通して、むつと山上は言葉を交わす事がなかった。間に挟まれていた颯介は、居心地悪そうにしていた。颯介に憑いている、細長い蛇のような見た目をしている狐、管狐も不穏な空気を察していたのか、ちらりとも顔は見せなかった。
さっさと仕事を終わらせたむつは、早々に帰る支度を始めていた。忙しかったわけでもないが、颯介は冷戦に突入した2人に挟まれて、ぐったりと疲れきっている。
「むっちゃん…真っ直ぐ帰るのかい?」
「ううん、しろにぃの所に寄る。あっちに日本刀置き忘れちゃってるから…取りに行かないと」
「あ、そういやお前…今は自宅のマンションだろ?あれ以来変な事は全くないのか?」
「…ない。全然ないの。だから、あたしもすっかりそれ忘れてて…でも…」
「でも?」
いつの間にか冷戦も終わったのか、それとも昨日の事に関係ないからか、むつと山上は普通に会話している。




