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4話
手紙に書かれている番号と、携帯の画面に表示されている番号とを何度も見比べたむつは、通話を押そうとしてそれがなかなか出来なかった。
しばらく、画面を睨むように見ていたむつだったが、深々と溜め息を漏らすと疲れたように携帯を机に置いた。画面に表示されている番号を、電話帳に登録するだけにして、かけるのは辞めたのだった。
マグカップに手を伸ばしてコーヒーを飲む、むつの眉間にはくっきりと深いシワが出来ている。
「…他人から聞くのはよくないよね。自分の両親の事だもん…お父さんとお母さんから聞こう。でも…聞けないよ」
マグカップに唇をつけたまま、むつはぶつぶつと独り言を言っては溜め息を漏らしたり、眉間にシワを寄せてみたりと1人で居ても、ころころと表情が変わっていた。




