216/1084
4話
手紙には連絡先となる電話番号と名前とが書かれているだけで、他には何も書いてはない。むつは、それを机に置いてコーヒーを飲みながら、どのタイミングで連絡しようかと悩んだ。これが電話番号ではなく、アドレスであれば時間をそこまで気にする必要はなかったのに、と思えて仕方ない。
しばらく悩んだむつは、ちらっと壁掛けの時計に目を向けた。颯介と山上が出社してくるまでは、まだ1時間は軽くある。誰も居ないと分かっていても、きょろきょろと辺りを見回したむつは、落ち着きなく立ちたがった。
どうしようかと悩んだのか携帯を机に置くと、マグカップとタバコを掴んでキッチンに行くと換気扇を回して、その下でタバコを吸い始めた。
苦いコーヒーをすすりながら、タバコを吸っていても何となく落ち着かない。足踏みをしながら、むつは半分も吸っていないタバコを消して、すぐに机に戻った。そして、意を決したように携帯を持つと、手紙に書かれている番号をゆっくり押した。




