4話
冬四郎を見送り、早すぎる出社をしたむつは、とりあえず暖房のスイッチを入れてからコーヒーをいれたて、自分の席に座った。
コーヒーをすすりながら、鞄に手を突っ込んで、中から携帯を引っ張り出した。家に母親が居るからか、あまり携帯をゆっくり見る事もなかったせいか、着信やメッセージが来ている事にも今頃になって気付いた。むつは1件ずつ見ては行くが、どれにも返信はしなかった。だが、実家に居る次男の諒からのメッセージだけは、きとんと返事をした。
普段、連絡を取り合う事もないうえ、諒から連絡してくる事などまず無い。そんな諒が連絡してきているという事は、よほどに困っているのかもしれない。むつは、くすっと笑いながらきっと大変なんだろうな、と他人事のように思っていた。
そして、携帯のカバーに挟んでおいた酒井から渡された、というよりもポケットに入れられた物を取り出した。メモかと思っていたが、小さな封筒に丁寧な字で書かれた手紙が入れられていた。最初から渡すつもりで、用意してあったんだというのが、よく分かる物だった。昨夜のうちにさっと見てはいたが、やはり冬四郎と母親の居る部屋ではゆっくり見れなかった。




