4話
「…にしても、お前は変なやつによくよく好かれるな。酒井さんより西原君に連絡入れてやった方がいいと思う気がする」
「えー?何で?やぁだし。皆して野次馬して面白がったりしてさぁ…今日も仕事行くのやだ」
「仕方ないだろ…むつがまさか見合いなんてなぁ…俺も正直驚いてるし。しかも向こうは、そこそこお前を気に入っててってなるとなぁ…まぁ心配されてるって事だ」
駅に着き改札をくぐり、2人は階段を下りていく。住宅街の最寄り駅なだけあって人は、そこそこに多い。むつと冬四郎はそれぞれ、違う電車で反対方向に向かわなくてはならない。
「見送ってやろうか?」
もうすぐやってくる電車に乗るはずの冬四郎は、むつの顔を覗きこむようにして少し身を屈めている。
「大丈夫だし」
「寂しがり屋の強がり」
「…そーゆー風に育てた人が悪い」
「威張って責任押し付けるな。でも俺が育てたわけじゃないからな」
「もぅ…ほら、電車来るよ?仕事終わったら連絡するね。気を付けていってらっしゃい」
「ん、むつも気を付けて行けよ」
ぽすっとむつの頭に手を置いた冬四郎は、電車に乗り込んで行った。他の乗客にまぎれてしまって、どこに居るのか分からない状態ではあるが、むつは電車が走り去るのを見送っていた。




