4話
母親が早くも寝室に引っ込むと、むつは冬四郎に髪の毛を乾かして貰いながら、再びぼんやりとした目をテレビに向けた。熱風と、ごつごつとしたいても優しい指で髪の毛を撫でられ、心地良さそうにもしている。
「…お父さんの話して思い出したんだけどね」
冬四郎は髪の毛にドライヤーを当てながら、むつの小さな声に耳を澄ませていた。部屋は違えど、母親が近くに居るから、遠慮して小声になっているのかもしれない。
「日本刀…お兄ちゃんの所に置きっぱなしにしちゃってる…明日、取りに行ってもいい?」
「仕事終わりに一緒に行くか?俺も…少し服を取りに行きたいな。いつまで、ここに居るか分かんないし」
「私服?」
「も、だし。シャツとかも…洗濯して貰っても同じのばっかりだと…何かなぁ」
「ずっとネクタイも同じだもんね。あーあいつ帰ってねぇなって思われちゃいそうね」
「あぁ…変な勘繰り入れてくるやつも居るからな。自宅じゃなくても帰ってるんだけどな…」
「やっぱりルームシェアする?」
「…しない。発狂しそうな奴に心当たりあるからな。後々めんどくさそうだ」
冬四郎の言う発狂しそうな人とやらを考えてみたむつだったが、どうにも思い付かなく、ふーんとどうでもよさそうな返事をするだけだった。




