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4話
冬四郎に少し話をして何か変わった事でもあったのか、むつはきりっとした顔つきをして、すっくと立ち上がった。だが、冬四郎の顔を見るとすぐに眉尻を下げた。泣きそうな顔をしたむつの、頭をわしっと掴んだ冬四郎は、ぐりぐりと揺らすように撫でた。
「情けない顔すんな。今日はすぐ寝ろ…でもその前に髪の毛乾かせよ?」
「…面倒くさいなぁ…久し振りに乾かす係り任せてあげてもいいけど?」
「してくださいって言ってみろ」
くっと冬四郎が笑いながら言うと、むつはぷぅっと頬を膨らませた。だが、すぐに頬から空気を抜いた。
「…髪の毛、乾かしてください」
「素直でよろしい。でも、母さんが髪の毛乾かしてからだな…それまで冷えるからソファー行って待ってろ」
背中を押されたむつは、ほっとしたような笑みを浮かべると、ぽたぽたと滴の垂れる髪の毛をそのままにソファーに座った。




