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4話
食事を終えた冬四郎が洗い物をしていると、ぺったぺったとゆっくりした足取りで風呂から出たむつがやってきた。眠いのか、どことなく不機嫌そうな顔で冷蔵庫を開けると、豆乳飲料を取り出してストローをさすと、冬四郎の足元に座り込んでちゅうちゅうと飲み始めた。
「…母さん、風呂先にいいよ」
「そう?なら、先に入ってくるわね」
母親は冬四郎に言われるがまま、バスタオルと着替えを持って風呂場に向かっていった。さぁぁぁっとシャワーの音が微かに聞こえてくると、むつは溜め息をついた。その溜め息と一緒にむつが何かを言ったようだったが、洗い物ををしていた冬四郎には聞き取れなかった。
「ごめん、聞こえなかった。何だ?」
「すぐるって名前に聞き覚えある?」
「………」
食器の泡を流して、手をふいた冬四郎は、むつの視線に合わせるようにしゃがみこんだ。




