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4話
「………」
母親の問い掛けには答えない冬四郎は、もそもそと食事を続けていたが母親の視線に耐えられなくなったのか、空になった茶碗を置いて溜め息を漏らした。
「むつに聞けばいいじゃないですか」
「何かあったみたいだもの。答えてはくれそうにないわね…いつもなら、どうだったってすぐ言ってくれるのに」
「そんなに何でもかんでも報告してたのは、中学生の頃だけじゃないですか?」
「それもそうね。で、冬四郎さんはあんまり今日の事をむつに聞いて欲しくないみたいね。話し方、敬語になってるわよ?」
「………」
「分かりやすいわね。ちょっと嫌な時は、冷たい感じで敬語になる癖は相変わらずね」
何とも言い返せない冬四郎は、お茶を飲み干すと深々と溜め息を漏らした。そして、早く自分のマンションに戻りたいとつくづく思っていた。




