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4話
帰宅したむつは、本当に疲れているようで母親の淹れてくれた茶を一口飲んだ程度で、早々に風呂に行ってしまった。
「…かなりお疲れみたいね。そんなに気を遣うような雰囲気の方だったのかしら?」
本人から話が聞けそうにないと分かったのか、独り言のように母親は呟いた。勿論、目の前には遅い夕飯を食べている冬四郎がおり、遠回しに冬四郎から話が聞きたいという事なのだ。だが、冬四郎は何も答えずに米を頬張っている。
冬四郎が答えそうにないと分かっていても、今日の事は気になって仕方ない様子の母親は、じっと冬四郎を見ている。ここからは、我慢大会のようなものだ。母親としては冬四郎が根負けして話すと思っているし、冬四郎は母親が諦めてくれると思っている。
どちらもこういう時の根比べでは、なかなか粘り強い。だが、年の功なのかやはり母親に勝てる気がしない冬四郎は、立ち上がると、そこまで欲しくはないご飯のおかわりを自分でよそって少し気を反らした。




