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1話
「………?」
邪魔になると分かったのか、女はすぐに端に避けると、気になったものへと目を向けた。それは、ショッピングモールの出入り口の横で、腕を組んでうつ向き加減に、つまらなさそうに立っている男だった。誰かと待ち合わせをしているように見え、特に変というわけではないが、やはり変だった。道行く人々も、女ほどあからさまではないにしろ、男をちらちらと見ているのがよく分かる。
女にじっと見られている視線を感じてか、鬱陶しいと言わんばかりに男は顔を上げた。男は女をじっと見るだけで、近寄ろうともしない代わりに、ふんっと呆れたような、小バカにしたような笑みを浮かべると、ばつが悪そうに顔を背けた。
眼鏡越しに、目を細めていた女の目元には、うっすらと笑みのようなものが浮かんでくると、ぱたぱたと男の元へと駆け寄った。
「何で無視するの?」
「…何で気付いたんだ」




