4話
寄り道出来る所ないからといっても、むつの足取りは何となく重い。疲れきっているのではなく、帰るのが嫌そうでちんたらちんたら歩いている。
「お前…母さんに今日の事、聞かれるのが嫌なんだろ?俺からは何も報告しないからな。っても…親父には兄貴から報告入るだろうけどな」
少しからかうような同情するような冬四郎の口調に、むつは苦笑いを浮かべた。確かに、母親からは今日の事は聞かれそうな気もした。というよりも、聞いてこなくても話すのを待ってるような雰囲気を醸し出されそうだな、とむつは思った。
「それもあるけど…」
「他にも何かあるのか?」
「んー?」
否定はせずに、困ったような笑みを浮かべているむつを立ち止まった冬四郎はじっと見た。そんな探りを入れるような目をされては、言わずとも考えている事が知られてしまいそうで、むつは顔を背けた。
「何だよ…酒井さんと何かあったか?」
「何かってほどでもないけど…何もなかったわけでもないかな」
「………」
何を思ったのか、冬四郎はあっと声を上げて口元を手でおおった。不思議がっているむつをよそに、冬四郎はいやいやと首を振って、深々と溜め息を漏らした。