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4話
最寄り駅に着くと、むつは電車が発車するまでホームに立ち西原を見送った。冬四郎は気を遣ってか、先に改札の前まで行き、むつを待つ事にした。
発車までの短い時間ではあっても、何だかお互いに気恥ずかしくどことなくぎこちない。ドアが閉まると、むつはひらひらと手を振った。手を振り返したりはしなかったが、西原は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
電車が見えなくなると、むつは人気のなくなったホームを歩いていき、エスカレータで改札まで行き、冬四郎と共に出た。
「ちょっと遅くなっちゃったけど…お兄ちゃん一緒だし、大丈夫だね」
「まだ日付が変わる前だしな」
むつはこくっと頷くと寒そうに、首を縮めてマフラーに口元を埋めた。母親のチョイスとは言えど、晃にも言われた通り、ノースリーブスのセーターはまだまだ早すぎる。と、いうよりも寒がりの、むつには無理すぎだったようだ。
「…風邪ひくから真っ直ぐ帰るぞ?」
「寄り道出来るような所ないじゃん、この辺」