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4話
それぞれの最寄り駅で、1人2人と降りていき、残るはむつと冬四郎、西原となっていた。
「西原君は見送る側になってるな」
「それは仕方ないですよ、俺が1番遠いですし…ちょっと寂しいっすけどね」
「…送ってあげよっか?」
「うちの駅まできて引き返すのか?面倒くさいだろ、それ。それにお母さん待ってるんだろ?」
「うん。日付変わる前に帰ってこいって言われてる。みんな、それ言うんだよね…」
「大人になってからも門限があるんだな」
「大人になってから門限守るようになったな」
冬四郎がしれっとそんな事を言うと、むつはぷいっとそっぽを向いた。学生の頃は、少し荒れていたという事を聞いた事のある西原は、へぇと頷いてくすっと笑っていた。
「いい事だな。それも親孝行ってやつだよ」
「でもさぁ…普通は逆だよ、逆。大人になったら門限ないと思ってたのにさ」
むつが頬を膨らませると、すかさず西原がその頬を指でつついた。すると、ぷしゅっと空気の抜ける音がしていた。