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4話
「なんつーかさ…俺、嫌だな。むつが見合いして結婚ってなったら。見合いが悪いわけじゃないし、むつが肩書きとか…経済的な物にひかれてるわけじゃないのは分かってても、結婚はして欲しくないんだよなぁ」
「…だから、しないってば」
「でも、いいなって思うんだろ?その…誰だ?何とか警視正殿の事が」
「うーん…いいなって思うよりも、何か懐かしい気がする」
「懐かしいって…実は幼い頃に近所に住んでたお兄さんとか、ベタなやつじゃないだろうな」
西原が少しちゃかすように言うと、むつは首を傾げた。玉奥の家に居る頃から、そして両親の事を知っているとなると、もしかしたらそうなのかと思うと、西原の言っている事は否定出来なかった。ましてや、父親と呑む場所が同じという事は、地元も同じな可能性もある。
むつはドアにもたれたまま、うーんっと悩んでいた。その反応からして、西原はまたしても、余計な事を言ったのかもと思っていた。