4話
むつは冬四郎の側にぴったりとくっついて、後からやってきた6人の野次馬たちとは目も合わせない。あからさまに、喋りたくないという態度を取っている。祐斗と西原は悪いと思っているのか、ちらちらとむつを見ている。
冬四郎はその視線に気付いて、むつの方を見た。まだ怒っているのかと思ったむつだったが、そうではないようだった。何か考えこんでいるのか、窓の外をぼんやりと眺めている。
「…むつ?西原君と谷代君がちら見してるぞ?構ってやったらどうだ?」
「遠慮するよ。そんな気分じゃないし」
「何を考えてるんだ?」
「んー…別に、何にも考えてないよ。ぼーっとしてただけ…考えるのは明日にする」
「そうか?相談になら乗るぞ」
「………」
びっくりしたような顔をしたむつに対して、冬四郎は苦笑いを浮かべた。
「俺がそんな事言うなんて思いもしなかったみたいな顔するなよ…」
「そうじゃないけど…相談かぁ…出来る人って居るのかなぁって思ってさ…」
「…何か言われてたな。何言われたんだ?」
「帰ってから話すよ、たぶん」
あまり話す気ないんだろうなと察した冬四郎は、分かったとだけ頷いておいた。むつもそんな冬四郎を見て、申し訳ない気持ちになっていた。