4話
「…帰ろ?」
むつは甘えるように、冬四郎を見上げた。そんな素直すぎるむつに、冬四郎は少し驚いているようではあったが、笑みを浮かべていた。そんな仲睦まじい2人に、晃と西原が羨ましそうに見ていた。特に西原は、それだけではないような目で、むつを見ている。冬四郎はそれに気付くと、少し気まずそうにむつから顔を背けた。そして、むつは冬四郎に顔を背けられて悲しそうにしていた。
「むつ、明日仕事だからな。来たら報告しろよ、今日の事を。晃には言わないから」
「…やだ。だって、この6人はストーカーだもん。ストーカーはそんなにいっぱいいらない」
眠たそうに、間延びしたような話し方をしているむつだったが、テーブルに出してある冬四郎のタバコを手に取ると、火をつけてゆっくり吸い始めた。
「お母さん、ご飯作って待ってるんだって。お兄ちゃんとお腹空いてる?」
「いや…そこまでだな。ってか、俺は今日もお前の部屋に帰るのか」
「強制的にそうだと思う」
「…そろそろ家帰りたいな」
「しばらくは、あたしの部屋を家だと思って…これも親孝行だよ」
ふーっとけむりを吐き出したむつは、もういらなくなったのか、冬四郎に吸いかけのタバコを押し付けた。冬四郎は一口二口と吸って、灰皿に押し付けて火を消した。