188/1084
4話
話してもいいのか分からず、京井はむつの方を見た。だが、むつは分かりやすいくらいに首を横に振っていた。
「…何だ?何かあったのか?」
「何もない。酒井さんとは…また会うかも」
むつが悩むようにそう呟くと、晃は少し驚いたような顔をした。だが、どこか嬉しそうでもあった。そんな晃をよそに、冬四郎と京井だけはどことなく納得出来ないような顔をしていた。ましてや、飛び出した京井は側に居た冬四郎よりも、明確に酒井の話を聞いている。それだけに、あぁも大胆に顔を合わせた事もない男を顔面を掴んで張り倒したのだ。
「はぁ…疲れたや」
腕を下ろして、膝の上に置いたむつはふぅと溜め息を漏らした。その様子からして、本当に疲れているようだった。
「そりゃ疲れただろうな。昼間は買い物したりして出てたんだし…そろそろ帰るか?」
冬四郎の気遣わしげな視線を感じて、むつは素直に頷いた。普段ならしないくらいに着飾り、初対面の男と2人きりで食事をして、疲れないはずがない。