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4話
「はぁ…もういい。いちにぃ帰って」
そう言いながら、むつはなぜか手を差し出していた。そして、何かをせがむように手のひらを、ゆらゆらと上下させている。
「…何だその手は?」
「お会計だけして帰って」
「お前っ…お前なぁ‼」
「あ、もういい。お母さんに言うから。お兄ちゃんがお見合いを成功させたいが為に見張りをしてたって」
「いや、それは…むつ…」
母親を出されると弱いのか、晃は困ったような顔をしている。そして、むつにさっさと帰れと言われているのも堪えるようで、山上に助けを求めるような目を向けた。だが、巻き込まれたくない山上は、そっぽを向いて知らん顔を決め込んでいる。
「結論だけでも聞いておかないとだからな。お前、酒井さんと良さげな雰囲気だったな…どうなんだ?」
「どこから見てたの?」
「ホテルから出てくる所からだな。冬四郎に連絡しただろ?それを西原君から聞いて、みんなで見てたんだ…まさか京井さんが飛び出していくとは思いもしなかったけど…何かあったんですか?」