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3話
「…あまりよくはない者が近くに居るようです。気を付けた方がいいですよ」
「何でそんな事…酒井さんは何者なんですか?」
「むつさんには何に見えますか?」
ふっと表情を緩めた酒井は、頬杖をついてむつの顔を見た。何に見えると聞かれてるとう事は、とむつは目を細めた。だが、だからといって酒井の見え方が変わるわけではない。
「…どのように見えても構わないんですよ。ただ、ようやくむつさんに会えたので…嫌われたくはないですね」
「ストーカー…ですか?」
「と、とんでもないっ‼そんな事する勇気があるなら、もっと早く会えるように何とか出来てますから」
「…?」
余計な事を言ったといわんばかりに、酒井が口元を手でおおった。父親の話では、付き合いが出来てからは半年ほどだと聞いていたが、酒井はそれより前から知られていたような感じの言い方だった。