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1話
片付けを済ませたむつは、よっこらせと呟きながら立ち上がるとキッチンに行き冷蔵庫を開けた。中から、豆乳飲料を取り出してストローをさして、ちゅうちゅうと飲みながら、ぐるっと部屋を見回した。物はあまり多くないが、ようやく生活感が出てきて、自分の城という感じでしっくりするようになってきていた。だが、今日はどことなく気に入らない。
豆乳飲料を一息に飲み干すと、むつは携帯を持ってキッチンに戻ってくると換気扇を回してタバコを吸いながら、掛け慣れた番号に電話を掛け始めた。
コール音は響くが出る気配はない。仕事中なのかもしれないと諦めると、むつは溜め息と一緒に煙を吐き出した。
うーんと悩みながら、2本目のタバコをくわえた所で、携帯が鳴った。表示された番号は、つい先程むつが掛けた相手で宮前冬四郎と表示されている。むつは、ほっとしたような笑みを浮かべるとすぐに出た。
『もしもし?どうした?』
「…ん、ちょっと…今、大丈夫?」
自分でも驚くような心細いような声が出て、むつは慌てて咳払いをしたがそんな誤魔化しが効く相手ではない。