3話
「問題児ですか?そんな風に聞いた事はありませんが…ご協力をあおぐ事が多いとは聞いてますよ。篠田君とも仲良くしてくださってると、お聞きしてますよ」
「篠田さんですか…はい…」
篠田と直接仲が良いというよりは、篠田の飼い猫で猫又となったこさめと仲が良いと言った方が、正しいような気がしたが、どこまで話していいのか分からずに、むつは曖昧な返事になってしまった。
「あ、焼きすぎになりそうですよ」
「あぁ…っ‼」
酒井に言われて、むつはさっと手でエビを皿にあげた。酒井も同じようにして皿に取ると、熱そうにおしぼりに指を押し付けていた。
「ふふっ…酒井さんも意外と、ですね。肩書きが上の方ってお箸とか使うかと思ってましたけど」
「そうですか?あんまり上品に振る舞うのは得意ではないんです…なので、ナイフとフォークを使うお店は苦手です」
「良かった、一緒です。私もお箸の方が得意というか…やっぱり使い慣れてる物の方がいいですよね」
「ですね、ですが…流石にこの海老を手で行くのはちょっと無理があるかもしれませんね。熱そうにです」
「ですね。お預け食らってる気分です」
殻が真っ赤になり、背から見えているぷりぷりの身からは湯気が立っていて、香ばしいかおりがしているが、熱そうでむつも酒井も手が出せないでいた。