3話
冬四郎が祐斗と西原を相手に、コーヒーを飲みながら時間を潰している頃、むつは1人用の七輪に炙られて、大きな海老が焼けていくのをまじまじと見ていた。
「すごっ…これって生でも食べれるようなやつですよね?すっごい贅沢な事してる気がします」
「そうですね。なので、店員さんも完全には火を通さない方がって言ってましたね」
「美味しそうっ…いい匂いっ‼」
ぱっと嬉しそうな笑みを浮かべたむつは、酒井と来てる事も忘れたかのようにはしゃいでいる。そんな無邪気な様子を見ながら、酒井はゆっくりとビールを呑んでいる。
「そろそろ、いいかなぁ…身が白っぽくなってきたしね、って…すみません…」
誰に話し掛けてるつもりだったのか、恥ずかしそうに顔を赤くして背けたむつに、酒井は気を遣わないで欲しいとやんわりと言った。
「…むつさんの普段の姿が見れた方が、私は嬉しいですよ。今日はご無理を言ったのは私の方ですし、気を遣われては私も困ってしまいますから」
「そう、ですか…?でしたら、酒井さんも気を遣わないでくださいよ。うちの長男と同じ立場の方に丁寧にされると…恐縮しちゃいます。私なんて、警察関係者でもないのに、問題児扱いされてると思いますし…」