3話
そこまで気付いていたのかと、西原は冬四郎の勘の鋭さに舌を巻いていた。冬四郎は怒るでもなく、すでに普段の優しげな眼差しへと戻っていた。
「野次馬が過ぎるだろ」
「…すみません。でも、やっぱりむつの見合い相手ってなると気になるんですよね。ましてや、肩書きが警視正ですよね」
「らしいな。しかも、組織内での評価も悪くはないみたいだからな…いい相手なんじゃないか?」
「宮前さんは賛成なんですか?」
「賛成も反対も…むつがどうするかだろ?」
「まぁ…ですけど…むつが見合いかぁ…」
「あの…宮前さんはお会いしたんですか?むつさんのお見合い相手とは」
「あぁ、むつを送った時にな」
「どんな人でしたか?」
「初対面だからかもしれないけど…腰の低い感じだったな。悪い感じはしなかった」
「お兄さんが認めたってなると…むつさんも有りって思う、あ…いや…西原さん?落ち込まないで下さいよ」
西原が野次馬根性もさながら、むつが気になって来ている事は、冬四郎でも分かっていたが、こうも分かりやすく落ち込まれると困る。がっくりとうなだれた西原は、疲れたような諦めたような溜め息を漏らして、椅子にもたれていた。