3話
不審者とは言えど人ではない可能性も考えていたが、今隠れた不審者は冬四郎にでも分かる。という事は、人なのだろう。だが、むつのストーカーなのか、それとも単に何かしていて人に見付かりたくなく隠れたのか、その判断は難しい。捕まえてみて、警察だと明かして職務質問をかけてみる手もあるが、そこまでしても良いものかと、冬四郎は悩んでいた。そして、どうしようかと悩んだからか、ほんの少し歩調がさらにゆっくりとした。
人通りはあまりないが、交通量はあるのか、少し離れた所から車の走り去る音は聞こえてきている。
人が隠れたらしき場所を通りすぎながら、冬四郎はまだ悩んでいた。だが、冬四郎はすぐに決心したのか、通りすぎてすぐに引き返した。ゆっくりとした歩みから、急に走り出した冬四郎に驚いたのか、じゃりっとコンクリートを踏む音がした。その感じからして、どうやら不審者は1人だけではない様子だ。
「警察だ。お前たち何をしている」
ホテルの裏手で、壁を隠すようにして植えられていた街路樹の中に隠れていた不審者は、びくっと立ち止まったまま動く気配はない。
「何故、隠れたんだ?出てきなさい」
出てこいと言った所で、大人しく出てくるはずはない。それならば、こちらから行くしかない。冬四郎は、詰め寄るようにして街路樹に近付いた。