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3話
「ありがとうございます…」
「いえ…むつさんお酒は?何でも呑まれるんですか?…って、あれですね。このまま、むつさんとお呼びさせて頂いて、構いませんか?」
「え?はい…勿論ですよ。あの、何でそんな事をお聞きになられるんですか?」
「挨拶して間もないんですよ?それなのに、名前でって…図々しいと思われたくありませんからね」
むつが瞬きを繰り返すばかりで何も言えないでいると、その隙を狙ったように店員がやってきて、コースターの上にビールグラスを置いた。それと共に、つきだしの小鉢と箸を並べると、店員はさっさと去った。
「あの…」
「あ、ごめんなさい。とりあえず…乾杯しましょうか、折角のビールですし」
気を取り直したようにむつが言うと、酒井はグラスの手にした。かちんっと軽くグラスを合わせて、むつはこくりと呑んだ。クリーミーは泡は、今までに呑んだ事のない味がしていた。