153/1084
3話
「むつさん、お飲み物はどうされますか?」
「えっと…あの…酒井さんと同じので」
メニューもなく初めての店で、何をと聞かれてもと思い、むつは酒井と同じ物をと頼んだ。酒井は少し悩むように首を傾げてから、店員にビールをと頼んだ。
「酒井さん、もしかして…無難にビールにして下さったんですか?」
「無難に…ですね。むつさんの好み分かりませんし…1杯目は無難にビールがいいかなって思ったんですが、ビールで大丈夫でしたか?」
「はい、大丈夫です。ごめんなさい、気を遣わせてしまって…それに、あの…すみません。遅刻をしたの私ですのに、店員さんに頭を下げさせてしまって」
「いえ、大丈夫ですよ。少し余裕を見て時間は言ってましたから。もし、むつさんがいらっしゃらなかったら、お父さんとここでって事にならなくて良かったって思ってますけどね」