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3話
分厚い絨毯に天井にはシャンデリアという、高級感を感じられる廊下をむつは、酒井の後に続くように歩いていく。酒井はここには訪れた事があるのか、慣れた様子で歩いていく。
「こちらです」
酒井は木製のドアをそうっと開けると、むつに入るように促した。こういう事は、京井にして貰ったりはあるが仲良くもない人にされると、何だかそわそわとしてしまう。つまりは、そういう事をされ慣れていないという事だ。
「あ、ありがとうございます…」
むつのおどおどした様子に、酒井は笑みを浮かべただけだった。店内に入った酒井は、名前を言い遅れた事を詫びていた。店員は気にもしていないのか、酒井と二言三言と話をしている。そして、用意してある席へと案内すると言い先に歩き出した。
窓際の夜景の見える席は、向かい合う形ではなく、横並びになっていた。これなら、気まずさも感じられないかと、むつはほっとしたように、引いて貰った椅子へと腰をかけた。