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3話
「…実は失礼な話、お父さんもいらしてるんです。行くって言って、来ないかもしれないんじゃないかって心配なさって」
酒井は言いにくそうに言うと、ちらっとソファーのある方を見た。むつが視線を追うように動かすと、そこには居心地悪そうな父親が座っていた。むつと冬四郎の責めるような視線を感じたのか、父親は渋々といった感じで立ち上がると、こちらにやってきた。
「…冬四郎も一緒だとは思わなかったぞ」
「すみませんね。むつの送り迎えを言いつかったものですから」
「迎えにも来るのか?」
「えぇ。むつにもそう言ってありますし…同じ家に帰るわけですし、迎えに来ると何か問題でもありますか?」
冬四郎は見下ろすような目付きを、父親に向けた。父親にもそんな目を向ける冬四郎を見て、はらはらしながらむつは2人をきょどきょどと見ていた。
「まぁまぁ宮前さん…」
宮前と呼ばれて、冬四郎と父親にむつまでもが酒井の方を向くと、酒井はぎょっとしたような顔をした。だが、3人とも宮前だから仕方ない。