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3話
「ねぇ…っ‼」
階段を上がっていたむつだったが、意外と足が開かず、階段を踏み外しそうになり、思わず冬四郎のコートを掴んだ。
「…着なれてないのって大変そうだな。でも前にはロングのタイトスカートはいてただろ?」
「中途半端に開くやつは何か、つい…」
「気を付けろよ。で、何だ?」
冬四郎が腕を曲げて、むつの手を自分の腕にかけさせた。掴まる場所が出来て、むつは階段ものぼりやすくなったようだった。
「酒井さんと会ってる間、お兄ちゃんは?」
「俺は…その辺の喫茶店に居るつもりだけど?店出る時に連絡くれたら、また店まで迎えに行く」
「本当に待っててくれるの?」
「あぁ、待っててやる」
むにっとむつの赤くなっている鼻をつまんで、冬四郎がくすくすと笑うとむつは少し恥ずかしそうにうつ向いた。