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3話
冬四郎がやってくると共に、金髪の男もいつの間にか居なくなっていた。冬四郎はそれに気付いているのか居ないのか、ただ物珍しそうにむつを上から下まで見ている。
「女の子って不思議だよな。メークと髪型を変えると別人みたいだし。喋らなかったら、誰か分からないかもしれないな」
「誉められてない気がする」
「誉めてるつもりはないからな。でも、まぁ女の子に見えるぞ。母さんはこういうの好きだもんな」
「みたいね。可愛らしい系好きみたい」
「あぁ…なのに、たった1人の娘が兄の影響で、柔道やら剣道やら始めた時は悲しんでたからな」
「しーらないっ。それより行こう?遅刻」
「…待たせとけ」
袖をずらして時間を確認した冬四郎は、ふんっと鼻を鳴らしたが遅刻をしているのはむつだ。冬四郎のようには、思っていられない。
「…お兄ちゃん、相手の人の事調べた?」
「あ?」
どうしてそこまで反対反対と言い、今も不愉快で仕方ないという顔なのか、むつはこの冬四郎の反応を見て何となく分かったが、何も言わずにぴったりと側にくっついていた。