138/1084
3話
『まぁこんだけ人多いと…また探さなきゃいけなくなりそうだしな…けど、お前…むつか?』
「はー?電話してるんだから、あたしだし」
『いや、そうじゃなくってだな…そうじゃなくて…こっち向けるか?』
「どっち?」
『…階段とは反対の…改札の方だよ…』
冬四郎に言われるがままに、きょろきょろしていたむつだったが、見慣れた姿を視界の端に捉えると、ぴたっとそちらを向いて止まった。そして、ぶんぶんと手を振った。
「…遅いっ!!」
「遅くはないだろ?俺のが先に着いてたんだからな…にしても、お前…めかし込んだな」
「お母さんチョイス」
むつが携帯をしまって、スカートをつまんでくるっと回って見せると、冬四郎は何やら納得したように頷いた。