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3話
最寄りに着くと、むつはきょろきょろとした。冬四郎はすでに来ているはずだったが、人が多いからか見付けられない。きょろきょろとしていると、何を思ったのか金髪の男が近付いてきた。
「おねぇさん何待ち?彼氏?」
「………」
軽そうな話し方に、むつはぷいっとそっぽを向いた。そして、探すより電話しようと携帯を取り出した。携帯を耳にあてながら、男との距離を取ろうと歩いているが、男はしつこくもついてきている。コール音はしているが、冬四郎が出る気配はまだない。留守番電話に切り替わると、むっとしたむつは電話を切ってまたかけ直した。
『あ、悪い悪い。着いたか?』
「うん、どこぉ?」
『どこって…改札の所に居るんだけどな。お前こそ、どこだ?』
「改札出て、駅の出入り口の近く。地上に出る階段の近くに居るけど…」
『分かった。そっち向かう…』
「あ、待って切らないで?このまんまで」
『何で?まぁいいけど…』
少し急いでいるのか、かつかつかつと足音が電話越しにも聞こえてくる。むつはまだ近くに居る金髪の男を横目に、流石に変なのが居るとは言えなかった。