3話
黒いタイツにショートブーツを合わせて、白いコートを着ると、その上から赤いマフラーをした。紺色の小さなショルダーバッグには、リボンもついていて今夜の装いは完全にデートに行く女の子という感じだ。むつは、玄関にある全身鏡の前で、何度も変じゃないかと確認をしていた。だが、母親が自信を持って大丈夫と送り出してくれた。
びゅーびゅーと冷たい風が吹く中、むつは足早に駅に向かった。準備は早めに出来ていたはずだが、もたもたして家を出るのが遅くなった。これでは少し遅刻するかもしれないと、むつは駅までを走っていった。
ホームにやってきた電車に飛び乗ったむつは、空いている席に座ると呼吸を整えた。長い距離を走ったわけでもないのに、こうもなるとは体力がかなり落ちている証拠だった。
折角セットした髪の毛が化粧が崩れていないかと確認し、むつは鞄から携帯を取り出した。冬四郎からメッセージが来ていて、店の場所を教えろとの事だった。むつは父親から渡された地図の写真を撮って、それを送っておいた。最寄りの駅までは冬四郎が来てくれるようで、目的の場所までは送ってくれるようだった。完全に保護者役ではあるが、冬四郎がそうしてくれると分かって、むつはほっとしていた。