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3話
どのくらい眠っていたのか、むつは母親の声で目が覚めた。そろそろ起きて、準備をしなさいという事だった。だが、すでにのんびりし過ぎたせいか、行く気にはなれないが、冬四郎にも父親にも行くと言ってしまっている。
「…夜からなら、休みに合わせてくれなくていいのに…面倒くさっ」
ぶちぶちと文句を言いつつも、むつはシャワーを浴びると髪の毛を乾かした。そして着替えると化粧をし、母親に髪の毛をとかして貰って、コテで巻いて貰った。普段、そんな事をしないのに母親は手際よくやっていく。
「自分の子のね、髪の毛をこうやってセットしてあげるの夢だったのよね。お母さん、元々美容師だし」
「ええっ!?そうなのー?知らなかった…」
「そうよ?」
くすくすと笑いながら、母親はむつの長すぎる髪の毛を丁寧に巻いていく。
「むつの髪の毛は長いしボリュームもあるから、やりごたえがあっていいわね」
「…小学校くらいまでは、毎朝お母さんが縛ってくれてたもんね。だから、伸ばしてるのもあるのかな…」
「それなら、家から仕事通えばいいのに」
「遠すぎる…」