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3話
結局、むつは母親のすすめるがままにピンクのセーターに、濃いベージュで膝丈の少しタイトなスカートに太目のベルトと大振りのネックレスに、コートとほぼフルコーディネートとなった。だが、母親が嬉しそうなので、むつは何も言わなかったが、お財布としては少しキツい。
「さ、ランチ行きましょうか」
紙袋を両手に持って、むつは母親に引きずられるようにして適当な店に入った。だが、適当に入ったわりには美味しいし安く、むつは少しだけほっとしていた。会計時に、意地をはって母親には財布を出させなかったが、正直な所は少し中身的に危ない気がしていた。
むつの買い物が済むと、母親も買い物をするのかと思ったが、すでにむつの買い物に満足をしているのか、母親は何も買わずに帰ると言い出した。
「帰って買った服を着てみせてちょうだいね」
「…1人ファッションショーみたい」
「あら?むつはしないの?」
「おっ…お母さんそんな事してるの?」
「お父さん相手にしてるわよ」
両親の仲睦まじさがそこまでとは思ってもいなかったむつは、何とも言えない顔でそうなんだと言うのが精一杯だった。