3話
食欲の落ちているむつは、茶碗に盛られた米も取り皿に乗せられた餃子も春巻きも冬四郎に押し付け、ケーキを食べると言ってもそれも半分以上を残した。だが、餃子も春巻きもケーキもまだ冷蔵庫にしっかりと入っている。
「…食べ過ぎて胃が」
翌朝起きてきたむつは、胃の調子が悪いと母親に溢していた。母親はまた粥にしようかと言い、むつの為に作り始めている。むつは顔を洗うと、キッチンに入っていき、母親に並んで包丁を手にした。
「お休みの日でも早いのね?」
「…うん。習慣かな?でも、だいたい家事してからお昼寝しちゃうから」
「でも、ちゃんとしてるのね。それで…むつは何してるの?」
「お兄ちゃんのお弁当作りする。この前も作ってあげて…ってまたお弁当箱回収するの忘れた」
「冬四郎さんもむつに甘えてるのね」
「そんな事ないよ?仕事とかさ…あたしが助けて貰う事多いし。出来る時だけ何かしようって思って」
「むつのお仕事は大変そうよね」
「うん…大変。でも…あたしにとっては大切な仕事かな。誰にでも出来る事じゃないっていうのもあるけど…何か色々。沢山の人と会えるしね。何か出来る事があるっていいよね…今は能力使えなくって…皆の足を引っ張ってるけど」
「そう?晃さんの為にも冬四郎さんの為にも力を貸してくれてるって、晃さんから聞いてるわよ。でも、そうねぇ…お母さんとしては、怪我と誘拐にはくれぐれも気を付けて貰わないと困るわね。女の子なんだから」