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3話
「むつ、行くなら早めに連絡しろ。どうせ、まだはっきり決めてないんだろ?」
「うん…お父さんも嫌ならそれでいいって。それなら早めに連絡をくれれば、自分が酒井さんと一緒に呑むだけだからって」
「…ったく、父さんといいお前といい」
「おバカよね」
ふふっと笑った母親は、冬四郎のグラスにビールをついだ。そして、ついでのように山盛りのようになっている、餃子と春巻きの皿を冬四郎の方に引っ張った。
「むつっ‼お前が好きな餃子と春巻きだろうが‼お前が食わないでどうすんだ‼」
「食べてるわよ‼食べすぎたら、ケーキ食べれなくなるでしょ!?何言ってんの?」
ばかっとむつが小声で呟くと、冬四郎はむっとしたような顔で、むつの取り皿に餃子とひょいひょいと乗せていった。
「止めてよ‼食べきれないもん‼」
「食えよっ‼仕事してきてんだから飯食え‼」
本気ではない兄弟喧嘩が始まると、見慣れた物だからなのか、母親はおっとりと笑っているだけだった。