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2話
「…お父さんはさ、あたしの事を何て話したの?だって何か変じゃない?何で、飲み屋さんで知り合った人の子供と見合いだなんてさ」
「末の娘も年頃だしなぁって話くらいだな。で、写真を見せたんだ。むつも見るか?」
むつが、こくりと頷くと父親はごそごそと携帯を取り出して、待ち受け画面を見せた。そこには、4人の兄とむつが一緒に写っている写真だった。
「いつの写真なの?」
「これは去年の正月だな」
携帯を受け取り、まじまじと画面を見ながら、むつはそうだろうなと思っていた。自撮りのように晃が手を伸ばして、その膝の上にむつが隣にはまだほっそりとしていた三男の知行と諒、冬四郎と写っている。
「さんにぃがまだ細い…」
「何も言うな」
「うん…お父さんこれ待ち受けにしてたんだ?」
「他にするのないからな。今年の写真もまた送ってくれ。待ち受けにするから」
父親は、にこにこしながらそう言っている。すでに幼さとは、縁遠い子供たちの写真を待ち受けにしている父親に、むつは苦笑いを浮かべるしかなかった。