2話
「お前、色々な知り合いが居るんだな」
「うん…遥和さんには、あたしこそお世話になりっぱなしなんだけどね」
だが、そうは言っても目の前にあるコーヒーもキャロットケーキも良い香りがしている。これを頂かないという選択肢はない。むつはフォークで一口サイズに切って、先ずはそのままで口に運んだ。ふわっとした生地と人参の甘味がしっかり引き出されていて、砂糖では出せない美味しさがある。
「美味しいっ…お父さん、これ美味しいよ」
にこにこと笑みを浮かべるむつに、父親も笑みを浮かべるとフォークを持った。そして、うんと頷いた。むつも父親もキャロットケーキとコーヒーを黙って、堪能していた。
「…それで、さ…相手の人の事」
「うむ…お父さんが呑みに行く所で知り合ったんだ。前から顔は知ってたけど、話すようになったのはここ…半年くらいだな。仕事の事なんかは最近知ったくらいだ」
「そうなんだ?じゃあ、お父さんもそんなに付き合いは長くないの?」
「そうだな。同じ店で顔合わせたら挨拶くらいはしてたけど…トータルでも2年くらいだな」
2年というと、ある程度の付き合いはありそうだが、ちゃんと話したりするようになってからは半年となると、そこまで付き合いがあるようには思えなかった。