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2話
「それなら、上の喫茶店でお茶ならいいかな?」
「それなら。ここの喫茶店って入った事ないし。レストランとバーはあるんだけどね」
「誰と来たんだ?」
「いちにぃに連れてって貰ったの。あたしはテーブルマナー苦手かも。お箸があれば十分」
口を尖らせながらそう言うむつは、子供の時のままだった。父親はそれを見て、頭を撫でるとむつを促して2階にある喫茶店に向かっていった。
喫茶店に入ると、むつも父親もホットコーヒーを頼んだ。京井のホテルの喫茶店だから、ここも京井が監修しているのかと、むつは少し気になった。
「…でさ、昨日の事だけど」
「あ、あぁ…むつに無理矢理、見合いをさせるつもりはないんだ。それだけは分かっておいてくれるかい?だから、嫌なら嫌でいい」
「って言われると、お父さんにも相手の人にも悪い気がしてきて…ってなるよ」
「それもそうだな」
「それよりも、どんな人なのか聞きたい。いちにぃよりも上の人なの?」