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2話
「むつ、どうしたんだ?」
父親はむつの隣に座るなり、相好を崩した。昨日の今日で、むつがわざわざ訪ねて来た事が嬉しいのかもしれない。
「…昨日の事ちょっと気になったし、ちゃんと話しよっかなって。お母さんには言ってあるから。お父さんの所に行ってくるって」
「そうか、そうか。なら、どっかで食事でもしながら話さないか?仕事は終わってるんだろう?」
「うーん…でも、お母さんが夕飯はあたしの好きなのにしようって言ってくれたから…」
「食べれなくなると困るな」
がっかりした風でもなく、父親は仕方ないと言っている。喧嘩をしているからなのか、母親には遠慮がちなのかもしれない。いつもであれば、軽く食事をしたとしても、その後また食べれる気がするが、今はそこまで食べれない。それを思うと、むつは母親にも父親にも申し訳ない気持ちになっていた。