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1話
「仕事そんなに無いなら、お前も半休…って時間でもないけど。終わりにしていいぞ?」
後からやってきた山上がそう言うと、むつは素直に頷いた。夏より冬の方が得意というむつではあるが、やはり寒いと夏場よりも消費するエネルギーは多い。今は大変な仕事を抱えているわけでもなく、むつは事務処理を済ませたら早く帰ってゆっくりしようと思った。
「お前はちょいちょい寝れない時が来るな」
「うん。社長は?そういう波ない?」
「ない」
きっぱりと答えた山上はタバコをくわえると、先にむつのタバコに火をつけてやった。むつが、ありがとっと言うと山上は満足そうに頷いている。
「あ、そういえばさ火車と会ったよ」
「…は?火車って寺に出たあれか?」
「そうそう。友達とお買い物に来てるって言ってたけど…ちょっぴり嫌そうにしてた」
「最近の妖は社会進出しすぎてないか?」
「かなぁ?博打してるよりましでしょ」
くっと笑いながらむつが言うと、山上は知らん顔して煙を換気扇に向かって吐き出した。