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15話
「むつ…今回は悪かった。もっと早く色々話せたら良かったんだが…言い出せなかった。見合い相手が、すぐるの事も玉奥家の事も知ってると、喋りすぎてはと思ったしな…不安な思いもさせただろうし…すまなかった」
「………」
酒井に謝られたむつは、ふるふると首を横に振るだけで、何も言えずにうつ向いた。
「むつ…?」
「…もっと早く…話して欲しかった。だって…玉奥の家で一緒に過ごした家族が居るって分かってたら…」
「言いたかったさ…でもな、宮前の子供として育ってるお前に言えるわけがないだろ?いくら、自分が養女だって知ってたからと言ってな。それに、分かればお前はもっと宮前家との距離を取りたがるとも思ったんだ。世話になった人たちに悲しい思いさせたいか?」
ゆるゆると首を振ると、それと一緒にぽたぽたっと畳に水滴が落ちた。
「な、お前はこれからも宮前の娘として生活していくって決めたんだろ?そうしなさい…でも、親が…すぐるとみずきさんが居る事も忘れないでいて欲しい」




