2話
結局、ろくに仕事もしないまま終業時間となると、むつはそそくさと片付けて出ていった。かつかつかつっと足音が遠ざかっていくと、颯介は椅子ごと山上の方を向いた。
「…むっちゃんがお見合いなんて…相手の人は能力の事とかも知った上なんでしょうか?」
「さてな…に、しても勝手に話が進んでるって言ってたな…あっ‼俺、むつの見合いがいつか分かる気がする」
「どうしてですか?」
「晃からむつの休みを聞かれたんだ。でも、むつには内緒にしてくれっていうからてっきり突然来て驚かすくらいかと思ってたけど」
「きっと、勝手に話が進んでるなら日取りも決まってるかもしれませんね。むっちゃんの次の休みは…」
ホワイトボードに視線を向けた颯介は、何とも言いがたい顔をしている。山上は、むつの休みがいつなのか把握しているようで、盛大に溜め息をついた。
「明日だ」
「何か…むっちゃんが見合いをせざるを終えない状況が出来つつあるような気がしますけど?」
「だな。むつの事だから、親父さんと晃の事を気にして、嫌々でも行くだろうな…あの感じからして。まっ…とりあえず、西原と祐斗に連絡だな」
「何でですか?」
「むつの見合い相手、見たくないか?」
相手の事が気になって仕方ないという野次馬根性が出てきているのか、山上は楽しそうな顔をして携帯をいじり始めていた。