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15話
相手が出ないと分かってか、むつは冬四郎に携帯を返した。そして、不貞腐れたのかもぞもぞと布団に潜り込んで、頭まで布団をかぶった。冬四郎は誰にかけたのか確認する事もなく、枕元に置いただけだった。
「寝るのか?」
「…寝ちゃうかも」
布団から顔を出したむつは、もぞもぞと動くと冬四郎の足の上に頭を乗せた。冬四郎はビールを呑みながら、甘えてくるむつの頭を撫でた。
「怪我はどうだ?痛むか?」
「大丈夫…お兄ちゃんは?それ…」
「まぁ大丈夫だ…」
冬四郎はあの時、どうして血を舐めたのか、その前にも様子がおかしかったのは何でなのか、聞きたいと思っていたが言い出せなかった。




