2話
「そうなの。お兄ちゃんたちも結婚なんてしてないのにさ…で、社長と颯介さんは何で結婚しないの?」
「何でってそりゃあ…俺はしたくないからだ。湯野ちゃんは何でだ?」
「相手が居ないからですよ。彼女が居るでもありませんし…でも、願望もないかな?むっちゃんは?お見合いの話が出るって事は、願望あるのかい?」
「ない」
見合い話が出ているというのに、きっぱりとないと言い切ったむつに、颯介は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「じゃあ何で見合いに…ってまだ行くかどうかも決めてないんだったな。むつの親父さんは、心配なんだろうよむつの事が。色々あったからな」
「大人しく家庭に入れって事?」
「じゃないだろ。特定の誰かが側に居ればまだ安心出来るって事じゃないか?」
「…みんな居るよ?」
「その、みんなってのは…俺らやみやの事だろ?そうじゃなくて、男がって事だ」
「社長も颯介さんもお兄ちゃんも男だよ?」
「性別の話じゃなくてだな…彼氏とか、むつを守れる奴がって事だ」
「それなら…遥和さんが1番強いし、遥和さんに居て貰う。用心棒ってやつで」
少しだけ噛み合わない会話に、山上は諦めたのかのように、ゆるゆると首を振っているが、むつは至って真面目なのか、山上の反応を見て首を傾げるばかりだった。