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15話
冬四郎からビールと灰皿とタバコを頼まれたのに、後者を忘れたと引き返したむつだったが、慌てて出る事になった。父親が母親の手を握って、引き寄せている所を目撃してしまったからだ。
いくら、血の繋がりはなくとも親は親だ。見てはいけない物をみてしまったと、ドキドキしていた。灰皿とタバコはどうしようかと思いつつも、むつはそのまま離れに向かう事にした。そして、いつまでも仲の良い両親の姿を見てしまうと、羨ましくてならない。
「お、むつ…遅かったな」
「あれ?タバコ…」
「あぁ、お前のを貰ってる。鞄がこっちにあったからな。諒兄さんが持って来てくれたのかもしれないな」
布団に寝転んだ冬四郎は、空き缶を灰皿がわりに使ってタバコを吸っている。片付けてが大変になるから、やめて欲しいが灰皿を持って来れなかったむつは、文句は言えない。




